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枇々木聖

フリーランスの錬金術師です。プログラムを書いたり、占いやったりして生活しています。古代の資料や伝説、神話が好きなのでメモ代わりにもなるデータベース&ブログシステムを作ってみました。

投稿記事

オーブン陶芸粘土を使って楔形文字粘土版をつくる ~ 焼きあがり編

空想神話のデザイン術 粘土版

数ヶ月前に実施した作業ですが、Facebookにはアップしていたものの記事にはまとめていなかったので今更ながらまとめました。

ここまでの経緯は過去の記事をご覧ください。
実践 オリジナル楔形文字のつくりかた ビギナー編
オーブン陶芸粘土を使って楔形文字粘土版をつくる ~ 下ごしらえ編

ここまでの状況

粘土版に楔形文字を書き、乾燥台に乗せるところまで進んでいましたね。

乾燥中

当時住んでいた部屋はベランダが無く、室内に置くしかなかったので乾燥にはかなり時間が必要。また、乾燥に時間がかかったせいか粘土の種類によっては端の方から反ってきてしまいました。この点は今の家では解決可能でしょう。


(栗茶)

乾燥すると端から色が変わっていきます。


(炭黒)

完全に乾くと色はかなり薄くなります。焼くと濃くなって乾燥前の色に近くなるのでこれで問題ありません。

焼成

家庭用のオーブンで焼成します。

まず乾燥のために低温で数十分焼き、その後高温で更に焼きます。

焼きあがり

焼成するとこのような感じになります。乳白と山吹は形成がうまくいってないせいもあって微妙な姿に。

山吹にいたっては乾燥が不足していたせいか一部破裂してしまいました。焼成中に「パン!パン!」と大きな音が鳴り響いてるほどだったので仕方ないともいえます。まだまだ慣れない粘土なのでこれからの課題ですね。

色、質感も含めると炭黒が今回試した中では一番いい雰囲気になりました。このシリーズの粘土は当面炭黒を使うことにしましょう。

写真では伝わり難いかもしれないですが、実物の質感は思った以上に良いのでまずは成功といって良いでしょう。

気候区分を学ぶ(1) : 気候が神話に与える影響を加味したい

空想神話のデザイン術

神話のための世界シミュレータ設計を進める中で、避けて通れない要素のひとつに気候があります。日本は細長い国土を持っているので、全体的な傾向は近しいものの北海道と沖縄では気候はかなり違っています。気候が違えば当然植物や動物が変わり、人の生活も変わります。

そうなると、当然そこで生まれる神話も違ったものになるはずです。

これから空想する神話は、気候とバックグラウンドも踏まえた「そこにそうあることが自然な」神話であってほしい。

そのために気候がキーになるに違いないと考えています。

条件設定をどこから始めるかは鶏と卵なところもあるので難しいのですが、気候や土地特性は初期設定として差し支えないでしょう。まず「どんな環境であるか」を決めることで「そこに何が生きているか(生きていられるか)」を導くことができるはずです。

気候が神話形成に与える影響

難しいことを考えなくても、気候が神話形成に与える影響はすぐにわかります。

例えば、寒冷地の神話であればその地域らしい話や神性が登場します。スカンジナビアの神話にはスキーの神(ウルやスカジ)とされる神すらいますが、エジプトやギリシャといった温暖な地域においてそのような神性はほぼいません。(いても重要ではない位置にいる)

細かい点ではあるのですが、そこを整えることで「自然さ」を高めることができるのではないでしょうか。

なぜこの神話にこういう神性が存在するのか?

それはこの神話を生んだ民が住んでいた地域の気候がこうだったから。

といった枝葉があればあるほど"らしい"神話が作れるはず。そのためには気候だけではなく、地形やそれに付随して「どんな植物や動物がそこにいたか」も大事なのでそこも更に先の課題として設定します。

様々な気候区分

詳細はまさにこれから学ぶのですが、少し調査したところ気候区分といってもいくつかの種類があるようです。それぞれ着目している部分が違い、長所短所あるのでメジャーなものは頭に入れておく必要がありますね。

そして今回は四つの気候区分をピックアップしました。

ポイントは 切り口の違い です。それぞれ、気候を決める要因となるものが違うので複数知ると多角的に見ることができるようになります。

中身の話はかなりの分量になりそうだし今回の記事はここまで。次の記事からそれぞれの気候区分と、気候と神話について掘り下げていく予定です。

領域と経路に抽象化した空想の世界地図モデル

空想神話のデザイン術

前回の記事に引き続いて、シミュレータの設計についての話。今回は地図、つまり空間や領域に関する部分をやっていきます。

繰り返しの話になりますが、目的は「神話を作るためのバックグラウンドを作る」のが目的なので地図としての完成度や領域情報を完全に持たせるといった狙いはまったくもってありません。

なので非常に抽象化したうえで実装します。

Area(領域)とPath(経路)

現実の空間はシームレスですが、情報量が多いしシミュレーションが大変なのでざっくりと"領域"、"経路"の二つに抽象化してしまいます。もちろん非現実的なわけですが、やりたい事に対しては充分ではないかと予想しています。

シミュレーションゲームの一部はこういった点と線によるマップを採用していますね。

この二つで構築されたマップ上に、住民達のグループを配置してシミュレーションを進めることになります。

Area(領域)が持つ情報

この世界の住民が生活する場所がAreaになります。どこまで細かく設定するかはもっと詰めないといけないのですが、いおおまかには以下のような項目を考えています。

  • その領域の気候、土壌、地形といったもの。気候と地形は別にして組み合わせるか、セットにして「熱帯の森林」のようにするかは未決定。短期間では変化しないが、100年単位の時間では変化するかもしれない。森林を開発しすぎて不毛になるとか、天災によって変化するとか。
  • 領域の広さ。その領域内に住める人数に影響する。技術発達によって集合住宅などの高密度住居ができると収容力は変化する。その他、農業や工業などさまざまな施設のキャパシティにも当然影響する。
  • 取得可能な資源。必要な技術が伴っていないと取得、利用できないといった設定を入れておく。

Path(経路)が持つ情報

Area同士を繋げる経路で、移動シミュレーションの判定だけに利用します。なので、ここに住民が住むことはありません。

  • 隣り合う領域同士が交易する際のコスト計算と判定
  • 住民が移動する際のコスト計算と判定

この二つが大きな役割になります。持っている情報はこんな感じでしょうか。

  • 経路の距離
  • 経路の幅。一定期間に移動可能な量に影響する。
  • 経路の種別。平地か山地か海か、など。種別によっては技術開発をしないと通過が困難という設定もできる。
  • 方向による違い(もしあれば)。例えば、高低差や海流などの要因によってA->BとB->Aの移動コストに差が出るなど。

詳細はシミュレータを調整しながら決めていくことになるでしょう。

まずは紙の上で地図を組む

方眼紙を使って、ざくざくとマップを定義していきます。ここでは全体的な配置だけを考え、細かい部分はリストを作ってあとで肉付けしていくことにします。

最初なので50x35の平面空間を想定。ここで決めることは位置関係と経路の接続です。

  • 領域の位置
  • 領域を繋ぐ経路
  • その経路は陸路か、海路か。(海路は点線にしている)

とりあえず、この三つの情報がわかるようにします。

Google spread sheetでリスト化する

書いたマップをデータ化するために、位置その他の情報をリストにしていきます。

いったん、座標と仮の名前、大きさ、大雑把な種類(平地、山、海とか)だけ情報を入れてみました。

データベースに入れて画面に表示する

http://mythgraph.com/managard

土台の部分をシミュレータに実装したのがこちらのページ。すでにシステム自体も作っています。
領域と経路をデータベースに入れ、それをもとにWebの画面に表示します。(ブラウザによっては表示できないかもしれません)

ひと段落したのでマップはここまで。領域や経路の細かい調整はほかの部分が進んでから再度戻ってからやることにします。

次からはここに住む人間のグループや時間の進め方について考えていきます。

空想神話作りのための世界シミュレータ設計

空想神話のデザイン術

突然な感もありますが、空想神話作りのためにシミュレータを設計しはじめました。シミュレータといってもそんなに大げさなものではなく、ちょっとしたシミュレーションゲームのようなものと考えてください。

今やっている空想神話作りのポリシーとして、「いきなり神話だけを作るのではなくそれが発生したバックグラウンドからやる」というのがあります。そのためには、その世界の歴史をひとつひとつ作る必要があります。

で、実際に作り始めたのですがすぐに手作業でやるのは無理があると実感。

地域や部族はひとつふたつではすまないし、時間の経過や部族間の接触まで考えていくととても人間の寿命で追いつく気がしません。

どうしたものか・・・と頭を抱えたのですがそこで自分の本業というか、仕事を思い出しました。

神話のことや物語の事を考えると一瞬忘れることもありますが、エンジニアでもあるのでプログラミングができます。多量のデータが必要なことはコンピュータにやってもらえばいいのです。

シミュレータを作ってしまえば、初期パラメータとルールを渡せばあとは計算で世界の歴史が生成されるはず。

あとはその出来上がった歴史をみて、物語を編んでいけばいいわけですね。

イメージ図はこのような形。


シミュレータの大まかな動きはこのようなものです。

1. 空想神話が発生する元になるWorldモデルを生成する
2. そのWorldにArea(領域)とPath(経路)で構成された論理的なMapを作る
3. MapにGroup(一定以上の人数で生活する知的生命体の集団)を配置する
4. 世界のルールを色々と定義する
5. 時間を進め、シミュレーションする。するとルールに従って色々な事が起きる、はず
6. 発生した出来事をChronicleとしてデータ出力する
7. そのデータ(=ある空想世界の歴史)をもとに神話を創る

どれだけシミュレーションを細かくやるか、マップをどれだけ子細にしていくかといった違いはありますが基本的な流れは同じになるはずです。

シミュレーションゲームで全プレイヤーを自動にして、その結果を見ているイメージです。

具体的な設計についてはこれからの記事で進めていきます。

オーブン陶芸粘土を使って楔形文字粘土版をつくる ~ 下ごしらえ編

空想神話のデザイン術

先日の記事で、紙粘土に楔形文字を刻む実験をしました。

しかし、紙粘土ではやはり質感や完成度において満足いくものができそうにありません。

せっかく楔形文字を書けるようになったので、よりレベルの高い粘土版にチャレンジしていきたいと思います。

オーブン陶芸粘土を試す

まず、粘土をよりよいものに変更します。

今回は、オーブンで焼成できる陶芸粘土をチョイスしました。選択のポイントはこちら。

  • 特別な道具がなくても利用できる
  • 簡単に、大量に安定して入手できる
  • 色のバリエーションがある
  • 「焼く」プロセスが入る

出土する古代の粘土版は、基本的には何らかの事情で焼成されたものがほとんどです。なので、粘土版リアリティを高めるには焼きプロセスが重要に違いありません。

もちろんこれは仮説なので実際やってみないとわかりません。色も実際に焼いてみないとわからないので、ラインナップにある四色をすべて試すことにしました。

乾燥のための台を作る

粘土が決まったところで、もうひとつとても大事なアイテムを準備します。

それは、粘土を乾燥させるための乾燥台です。

前述のオーブン陶芸粘土、焼成できるようになるまでおよそ2日~10日の乾燥が必要です。その間、安定した状態で置いておける台が必要です。また封を開けてからある程度乾燥するまでは、粘土版を動かすことすらできません。

なので、粘土版の作成作業をしてそのまま乾燥プロセスに移せる乾燥台が必要なのです。

台の材料はMDF(合板)、サイコロ木材、木材用両面テープを使います。板はなんでもいいですが、MDFが安くてよいと思います。

MDFに両面テープを使いサイコロ材を片側くっつけ、このようにスタック可能な形にします。これでまとめて粘土を乾燥させることができます。

粘土版をつくる

乾燥台ができたら粘土版を作っていきます。

しかし、困ったことがひとつ。

作業中、両手が塞がるため写真を撮ることができませんでした・・・。これは今後なんとかしないといけない。

手順を文章で説明するとこうなります。

  1. まず、粘土を開封する。
  2. まず両手である程度の大きさまで広げる
  3. ある程度伸びたら、乾燥台に置く
  4. 乾燥台の上で延し、適切な大きさと厚みに調整する
  5. 粘土版に楔形文字を書く

書き終わるとこうなります。白と山吹はちょっと失敗してしまったので茶色と黒が本命。

乾燥中!

ここから10日ほど乾燥させて焼成に入ります。邪魔にならないようにスチールラックの上に置いておきました。

早く焼きたくて仕方ありません。

多くの神話は「声の文化」に生まれ、「文字の文化」によって死んだ

空想神話のデザイン術

私達は文字の文化に生きています。この文章も文字ですし、街の中、生活のいたるところに文字による情報があふれています。

特に、日本は識字率が非常に高い国なので文字を扱えない人というのは極めて稀です。社会も文字が扱えることを前提に構築されています。

テレビやラジオといった媒体の「トーク」ですら、多くの部分は台本があるわけでそれも一度文章化された情報です。

さらにいえば、たとえ声で喋っている人もそこに至る過程で文字を利用しています。なので、まったく文字の影響を受けていない現代人というのは実質、ほとんど存在しないといっていいでしょう。

しかし、神話が生まれた時代はそうではありません。確かに、多くの神話は文字や文章によって記録されることで保存されてきました。ただし、その神話そのものは文字がない文化から継承されていることが多いのです。

人間にとって文字は必須コミュニケーションツールではない

文字が無い文化はありますが、声によるコトバがない文化というのは存在しません。それはもはや人間社会の文化とはいえないでしょう。世界にはまだ文字を持っていない民族が残っていますし、識字率が低い国もあります。赤ん坊だって最初に覚えるのは文字ではなくコトバです。

また、古代においては文字が扱えるというのは特殊な技能であり一部の人が持つ文化でした。学者や専門職に該する人の術だったわけです。

そのことが、神話を知るうえで重要です。

多くの神話は「声の文化」に生まれ、「文字の文化」によって死んだ

数多くの神話、ギリシャ神話や北欧神話などは声の文化によって生まれました。詩人によって昔話や教訓話が語り継がれた時代です。

その世界には文字が無いため、基本的に伝達はすべて口伝で行われます。結果、神話は僅かながらも変化をすることになるでしょう。伝達の際、ミスがあって完全にコピーされないこともあるでしょうし受け取った詩人によるアレンジが入ることもあります。

もちろん、大筋は変わらないし文化としての傾向がかわるものではないですが常に変化をし続けています。

この時代の神話はまさに「生きている」神話です。生きているからこそダイナミックに、変化を続けていたわけです。

時代が進むと様々な理由で声の文化はなくなり、各地の神話も失われていきました。ただその中でも幸運なものが、文字によって記録されていました。

しかし、その神話はもはや死んでいます。神話を生み出した文化や社会は既に存在せずそれが発展、変化することはありません。

つまり、我々が今知る神話というのは多くが「神話の化石」であるといえるでしょう。

神話が生きていた時代にトリップする

神話はすでにほぼ死に絶え、私達が得ることができるのは神話の化石ばかりです。でもそれに意味がないわけではありません!化石を通じて、当時の時代を思い浮かべることはできます。

もちろんそのためには様々な周辺知識が必要ですが、それをするだけの価値と面白さがあると信じています。

「神話の化石」そのものだってもちろん楽しめるものですが、それをツールとして生きた神話を体感することはより日々の生活を豊かにしてくれるでしょう。

ニコラ・フラメルの著書にける硫黄と水銀の扱い : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート 中世ヨーロッパ編(6)

錬金術


関連項目: ニコラ・フラメル

ニコラ・フラメルが書いたとされる「賢者の術概要」の内容をざっくりと紹介していきます。実際に著された時期は諸説ありますが、ある時代の錬金術思想を大きく反映した内容になっているのは間違いありません。

根底に流れている思想はアラビア時代から大きく変わってはおらず、似た内容が多々出てきますがその微妙な差も含めて感覚を掴む手掛かりになるでしょう。

物質の源一性

錬金術の書において、形を変えて度々出てくる思想が物質は根源的にはひとつだということです。色々な物質があるのではなく本質的にはひとつのものが多様な姿ととっているに過ぎないという考えで、それがあるからこそ卑金属を貴金属に変えたり魂の浄化によって物質を変容させることも可能だという理屈です。

この考え、紀元前の昔からこの時代まで続いていたわけで非常に根強い信仰があったことが伺えます。

金属の精子とその特性

賢者の術概要では、まず硫黄と水銀の性質と働きが説明されます。度々出てくる硫黄と水銀ですが、賢者の術概要でも細やかな記述がなされています。

  • 硫黄と水銀は金属の精子である
  • 一方(硫黄)は男性精子、他方(水銀)は女性精子である
  • 硫黄は土と火の元素の謂で、火を内包する土である
  • 水銀は水と空気にほかならないもので、空気は水の中にある
  • この二つは二頭の竜またはグリフォンより獰猛な二匹の蛇にも喩えられる
  • 無翼の竜は硫黄。
  • 翼持つ竜は水銀。
  • この二つが自然の手により合体すると、一切の金属の母と呼ばれるものになる

全ての金属は硫黄と水銀、またそれに内包される四大元素のバランスだということが繰り返し述べられています。また、その元素も結局はもともとひとつのものが多様な姿をとっているだけなので大元はひとつしかありません。

土、水、空気、火が指しているもの

四つの元素が文脈に出てくるとき、それが現代日本語が指している土、水、空気、火の意味と同じだと思ってはいけません。訳の都合ももちろんありますが、金属と惑星の対比にもあるように錬金術師はあるものを表現するためにそのものの名前をあえて用いない傾向があります。

なので、この四大元素も言葉が指しているものそのものというより、「それが持つ性質」を指していると考えたほうがよさそうです。

土は固定されていて重いもの、固体の性質。
水は広い意味で流れるもの、流体の性質。
空気は希薄なものや捉えられないもの、気体の性質。
火は触れられない、形の無い熱やエネルギー。

そう考えていくと、確かに万物の元素らしいところがあります。


賢者の術概要にはまだ多くの内容が含まれているので続きます。

空想言語メモ 最初の一歩

空想神話のデザイン術 空想言語

楔形文字をつくる中で、いくつか思いついたことがあったので覚書としてメモ。

いきなり多くの語彙を作ろうとしてはいけない

まずある程度の語彙を揃えようと思ったのですが、これは非常に厳しい試みでした。参考にしたのは2000前後ある英語の基礎語彙なのですがとにかく多いしつらい。

たとえばこういったリストから埋めていくという活動ですね。 http://jbauman.com/gsl.html

またこのやり方では、初期の神話では使いそうもない語彙があってモチベーションを下げる要因となります。 ということでこのやり方は100語ほど作ったところで終了しました。

書く内容を先に決める

次に試みてみるのは、まず日本語で書いてからそれを表現するのに必要な語彙や文法を足していくというものです。実際のコトバも、必要なものから順に増えていったでしょうからこのやり方でも大きな問題はなさそうです。

単純な文法でやる

いきなり複雑な文法を作るのは大変です。なのでまずは単純な文法からはじめることにします。

たとえば私が最初に作った文章はこのようなものです。

「彼等は 山に のぼった。水が 押し寄せてきた 大地に。そして 水が 流した 人を。そして 水が 流した 木々を。」

覚えたての外国語のような状態になっています。

さて、この文の構成要素を分解するとこうなります。

代名詞- 名詞- 動詞-時制
名詞- 動詞-時制 名詞-
接続詞 名詞- 動詞-時制 名詞-
接続詞 名詞- 動詞-時制 名詞-

格標識を明示しているので、語順は入れ替わっても問題ありません。これによって、リズムや韻に合わせた文章構築ができるようになるはずです。

また接続詞は、まずは状況を累積していくためのもの(and,そして)のみでOK。

あとは少しずつ語彙や文法を増やしていけば徐々に言語としての体裁が整ってくるはず。

実践 オリジナル楔形文字のつくりかた ビギナー編

空想神話のデザイン術 空想言語

空想言語をつくるための重要な要素、文字のデザインをしましょう。今回は文字の中でも、楔形文字を作るやり方を紹介したいと思います。内容としては初歩的なところになっていますが、そのぶん取っ掛かりやすいのではないでしょうか。

さて、文字だけで説明しても埒があきませんのでまずはこちらをご覧ください。

これは私がデザインしたオリジナルの楔形文字です。かなり合理的に単純化しているので、実際あった古代の楔形文字とくわべると非常にシンプルな形になっていますが、最初はこのくらいが作りやすいでしょう。

そしてこの文字を実際に粘土版に書くとこうなります。


※可読性と演出のため補正をかけています。もとは紙粘土なので白地

細かい部分の説明に先立ち、まずは楔形文字の特徴や字形ルールについて述べます。

楔形文字って?

人類が得たもっとも初期の文字のひとつで、主に古代メソポタミア地域で利用されていました。シュメール、バビロニア時代の神話や伝説はこの楔形文字で書かれており、いくつか重要なものが出土しています。

この文字は最初、商人や行政官などが帳簿をつけるために利用していました。メソポタミアの地では、文明が発達するにつれいわゆる事務処理というものが増えることになります。当然、それまでのやり方である口伝や人による事務には限界が出てきます。そういった時代の思考錯誤の中で、「文字」というものが発明されます。

そういった経緯があるため、初期の楔形文字はどちらかといえば表意文字と数字の組み合わせが多いものでした。

たとえば「牛 5 草 7」といった書き方ですね。しかし、徐々にそれはコトバそのものを書き記すためのメディアになっていきます。

今回、ターゲットにする楔形文字は「原始的な楔形文字のフェイズを越え、音素に置き換え可能でコトバの記述が可能になったところ」を想定しています。

楔形文字は粘土版に書かれる

この文字をデザインするにあたって、極めて重要なポイントがあります。それは、楔形文字は原則として「粘土版に植物や骨などの尖筆を押しつけて書く」ものだということです。

こんにちの私達が慣れ親しんでいる紙にインクや鉛筆で書くやり方とは、まったく常識が違います。

近い時代の記述媒体だと、石板やパピルスというものもあります。しかし、この二つも粘土版とは記述をする根本的なルールが違います。

三つの媒体の特徴をまとめると、このようになります。

  • 紙、パピルスとインクや鉛筆=乗せる、加える。媒体にプラスの力をかけることで書く
  • 石板=削る、減らす。媒体にマイナスの力をかけることで書く
  • 粘土版=変形する。媒体の形を変えることで書く

粘土版による記述は、媒体となる粘土に尖筆によって圧力をかけることで変形させ、そしてその変形の「跡」を記号として利用することで記述を実現するわけです。このことが、どんな字形を利用できるかといった点に密接に関わってきます。

字形のセオリー

楔形文字は、その記述法からくる物理的な制限によって利用できる字形にかなりの制約があります。

このように右、右下、下向きの楔を基本的に利用します。これはシュメール語やアッシリア語でもほとんど例外がありません。

なぜこういった字形になるのでしょうか?それは実際に粘土版に楔形文字を書いてみるとよくわかります。

右利きの人間が素早く粘土版に字を打とうとした場合、どうしてもこの三方向に集中せざるを得なくなります。右上、左下はギリギリなんとかなりますが、記述速度は落ちることもあってやはり頻繁には使われていません。

上向き、左上向きにいたっては非常に厳しいため全くと言っていいほど見られません。

楔形文字のデザインをする場合は、この点をしっかり含めておく必要があります。さもなければ、リアリティのある楔形文字をデザインすることはできないでしょう。

字形の書き分け

楔形文字の字形を決める要素は結局のところほぼ二種類しかありません。

  • 最初に押し付ける強さ
  • その後、線を引く長さ

この二種類と向きの組み合わせによって字を構成していきます。

写真を使って説明するとこうです。

まず(1)の強さで大きさを変えます。ここにほとんど力を入れなければ単なる線に近くなります。

短い字形にする場合は(2)のような角度ですぐに粘土版から離します。一方、長い字形にしたい場合は(3)のような角度で粘土版に押しつけて線を引きます。

このパターンをどう組み合わせていくかを決めることで、楔形文字のデザインを行います。

複雑な楔形文字

今回デザインした文字はシンプルなパターンばかりですが、実際の古代語はもっと複雑な字形がたくさんあります。

表意文字を含めるとパターンの数が大量に必要なため、複雑な字形を使わざるをえない事情が出てきそうです。 この点については、よりエクストリームに楔形文字を作る機会に説明することになるでしょう。

オリジナル楔形文字のデザイン

では、ここまで説明したところで最初に紹介したオリジナル楔形文字に戻りましょう。

見てわかるように、とても合理的なシステムに基づいてデザインされています。なので、古代らしい混沌とした字形はなくそういった意味でのリアリティはやや薄くなってしまっています。しかし、そこをこだわりはじめるとさすがにハードルが高すぎるためまずは単純な形からはじめるのがよいでしょう。

文字の種別(音素、音節、表意など)をデザインする

まず、最初に表記体系を決めましょう。

  • 音素文字。文字ひとつがaやtといった音素ひとつを表現する。代表的なものはアルファベット。
  • 音節文字。文字ひとつがkaやbaといった音節を表現する。代表的なものは日本語の仮名。
  • 表意文字または表語文字。漢字のように字が意味と読みを表現する。

主にこの3つもしくはその組み合わせで選ぶことになります。

今回はビギナー編ということで、音素文字つまりアルファベット的な文字を作ります。 必要となる文字の数が少なくてすむので、最初にやるならこれがもっとも楽でしょう。

現実世界の楔形文字は「表意文字+音節文字」の組み合わせが主流だったようです。これは「漢字+仮名」を使う日本語に近いシステムですね。日本語をよくご存じのみなさんはおわかりの通り、このシステムは字のパターンが多くなるので大変です。

もちろん漢字のような数は必要なく、数百程度だとは思いますがそれでも楔形文字のパターンでそれを実現するのは非常に大変です。なのでそれはもっとエキスパートになってから考えましょう。

文字のパターンを作る

体系が決まったら、実際の文字パターンを組んでいきます。

守ったほうがいいルールは二点。

  • 前述の字形ルール
  • 文字と文字と境界をはっきりさせる

これだけです。あとは自由でもよいでしょう。もちろん、より本格的にやるにはなぜその字がその形になったかというバックグラウンドも重要です。しかし、最初からそれをやろうとするときりがありません。

今回私が作ったものは、かなりロジカルにできています。

  • 母音は下向き長楔で始まる
  • 子音は右向き長楔で始まる
  • 数字は下向き短楔で始まる
  • 構文記号は右下向き短楔から始まる
  • 語を区切る記号は下に置く

これは日本語や英語といった発展済みの言語をわかった上のデザインなので、より古代的にするならもっと混沌としてもよいでしょう。また、アラビア語などまったく違う文化圏の文字からルールを借用するという手もあります。

また、最低限のルールを守ったらあとは造形的な"見た目"を重視するのもよいでしょう。

実際に書く!

デザインしただけでは意味がないので、実際に書いてみましょう。書く中で問題点や改善点にも気づいてくるはずです。


いかがでしょうか?アルファベット式であれば簡単に作れるのでぜひチャレンジしてください。そして私と楔形文字について語り合いましょう。

ちなみにこの楔形文字で書いた例文も独自のものですが、それについては別の記事で紹介します。

錬金術師ニコラ・フラメル : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート 中世ヨーロッパ編(5)

錬金術


関連項目: ニコラ・フラメル

講座の最終回ではニコラ・フラメルについてとその書に記されている思想について学びました。この回だけ、日本語の文献だったのでとてもとても楽に読めたのですが書いてあることの意味不明さは相変わらずのため、大枠では差がなかったようにも感じますね。

まずはニコラ・フラメルという錬金術師について。

錬金術師ニコラ・フラメルという現象

このニコラ・フラメル、その実体についてはさまざまな説があります。1330年生まれ、1418年没とされる彼は錬金術師として、ユダヤ人アブラハムなる人物の写本を発見したという伝説があります。ただこれはさすがに信憑性が薄く、後世になって作られたものだろうという説が一般的のようです。

彼は夫人のペルネルと共に錬金術を研究したとされていわれていますが、当時は女性が錬金術の研究をすることは珍しくそこも特殊です。また、このペルネルは以前の夫が商人で非常に裕福だったとも言われています。フラメルの研究もその資金で行っていた、という話が伝わっているようですね。

存在しなかった

さてフラメルの存在についていくつか説があるわけですが、極端な例としてそもそもそんな人物はいなかったとされる説があります。ただこれはさすがに行きすぎで、少なくともニコラ・フラメルという人物が14世紀に存在したであろうという点については確度が高いようです。

生家や記録もそこそこ残っているようなのですが、こんな説が出てしまうところにニコラ・フラメルへの注目度が伺えます。

錬金術師ではなかった

史的にはかなり有力とされているようで、ニコラ・フラメルという人物は存在したが錬金術師ではなかったとされる説です。著作は17世紀あたりに書かれたもので、その時に諸々の伝説が形作られたとのこと。つまり、ニコラ・フラメルの著作とされているものは全て偽書ということですね。アラビア編のゲーベルも偽書が多い錬金術師ですが、彼については彼自身が錬金術師であったことに疑問がほとんど挟まれていません。

錬金術師だった

これはいくつかのパターンに分かれます。まず、錬金術師でかつ著作も彼のものであるという説。もちろん、伝説的な部分はさておき少なくとも彼の著作については真であるというわけです。
別の見方としては、錬金術師ではあったが著作は後世に書かれた偽書であるというもの。これも有力視されているようです。

不死の存在になった

存在しないとは逆方向に極端なのがこの説。賢者の石、エリクサーは人間の身にとっては不老不死の薬であるのでそれに到達した彼は不死の存在になったと。ただ、これはさすがに現実的にはありえないでしょう。ただそんな話が残るほどに伝説的ではあるわけです。

著作、賢者の術概要

彼の著作は象形寓意図の書が有名ですが、今回は「賢者の術概要」という書を読んでいきました。これは彼が書いたとされる錬金術の概要を説明したもので、960行の詞になっています。当時の価値観を俯瞰するのによい文献であるとの事です。


このように謎めいた背景を持つニコラ・フラメルですが、だからこそ魅力もあり後世の物語においても伝説的な錬金術師、魔術師としてよく登場します。確かに、そういったミステリアスなところには惹かれるものがありますね。 著書、賢者の術概要については別の記事にて掲載します。

空想言語のデザインに向けて

空想神話のデザイン術 空想言語

空想神話を作るにあたって、どうしても必要なのが空想言語です。なにせ、神話が発生するにはその神話を発生させる人々、民族にコトバがなければいけません。せっかくなので、やはり基本的な部分から作っていきたいものです。

とはいえ、最初から現代で実用されている言語と同じレベルの完成度を持った言語を作ろうとするとあまりにも作業が大変です。なので、必要なところに絞っていきましょう。

さて、その必要なところとは何でしょう?この文脈では「神話を作ること」ですね。なので、神話を作れるレベルまで作ってしまえばよいことになります。 その神話も、現代語のように洗練された内容になっている必要はありません。実際のところ、古代の神話はかなり原始的な構文になっていて現代人が意訳によってなんとか読み解いているのが現状です。

なので、これから作る言語もまずはとても原始的なものでOKでしょう。

基本的な考え

言語を作るために必要不可欠なものはなんでしょう。

まず、思いつくのは語彙ですね。ある物が何であるかを識別する標識である名詞類、何らかの動作や活動を意味する動詞類、対象となるものの性質を表現する形容詞類はどうあっても必要となるでしょう。ただ、その数は現代ほどに多く取りそろえることはなく、神話を記述するに充分な語彙が備わっていれば問題なさそうですね。
ところで、語彙には代名詞、冠詞、接続詞といった文を構築するための要素も揃えなければなりません。ただ、この部分に関しては文法ルールにも影響を受けます。

次に、先に挙がった文法すなわち文を構築するためのルールについて考える必要があります。これがなかなかの難問で、なんとも非常に難しい。語彙に関しては、結局のところ数を揃えるという気合いの話になってきますが文法はそういうわけにもいきません。もちろん、原始的なものでもよいですがそれでも

そして、上記のコトバは実際に発音されないといけません。なのでそれぞれ「発音」も重要ですね。その言語で「どういった発音の仕組みを採用するか」といった点はその言語を大いに特徴付けるため、他の要素に並んで肝要です。
日本語は子音と母音は基本的に同時に発音される音節を中心にした言語ですが、英語などは子音と母音がある程度分離した音素を中心とした言語です。また、利用する母音の数や子音の数も言語によってまちまちです。
更にアクセントや強弱、リズムの組み方もそれぞれの言語で特徴があります。たとえば中国語では、そのアクセントやイントネーションによってそもそも別のコトバとして認識をすることになります。

最後に、そのコトバを表記するための「文字」を生み出なさければいけません。文字を最後に持ってきたのは意味があります。どの文明でも、基本的に文字は最後の発明されるものだからです。コトバ、声のみによる文化は存在しますがいまのところ文字だけの文化というは存在しません。なので、文字は最終的な生成物になります。制作のうえでは、文字ができるまで発音をアルファベットないしはカナで表記しておけばよいでしょう。

以上「語彙」+「文法」+「発音」+「表記」の基本的なところが整えば、神話を記述するために必要な言語が準備できるはずです。

最初は日本語システムと英語システムをアレンジ

言語の構造は多々ありますが、最初は身近なものをアレンジするのが効率的なのは間違いありません。なので、身近な本語と英語のシステムを最大限活用することにしましょう。

今回作る言語は、大まかにこのようなルールに則って構築するつもりです。

  • 発音システムは英語とほぼ同じものを採用する。すなわち、子音と母音は分離して表記および発音される。
  • 文字の表記システムも英語を踏襲する。26種類のアルファベットを音素文字として利用する。
  • 一部の名詞、たとえば特殊な固有名詞には表意文字を割り当てる。ただし、読みは一種類のみ。
  • ひとつの文字にひとつの音素を割り当てる。[a]は常に[a、日本語でいうとア]と読む。「エイ」と読ませることはない。同様に「i」も常に「イ」のような音で読む。この点は英語より日本語カナに近い。発音が苦しいものが出てくる恐れがあるか、単純化のためいったんはこの形で。
  • 文法はほぼ日本語を踏襲する。ただし、一部に日本語とは違った要素も含める。
  • 格の標識に、格助詞ではなく名詞の語尾変化を利用する。日本語を例に出すと、「私が=watashi ga」ではなく「-ga」という語尾を追加して「watashiga」という名詞に変わる。

とりあえず、このあたりをベースにしつつ実際に書きながら使いにくい部分は修正していく予定。格助詞ではなく格変化に近いルールを採用したのは、そのほうが詩を作る際にリズムを取りやすくなるだろうという仮説のためです。おかしかったら変更します。

これから語彙のリストを作ることになりますが、道程は果てしないので間に他の作業も挟みながら進めていきます。

楔形文字を書く ~ リベンジ編

楔形文字 空想神話のデザイン術

さて、前回残念ながらコレジャナイ感が強い楔形文字になってしまったのでスタイラス(尖筆)を新調してリベンジです。

いくつかの資料から、どうやら先端は尖っているものではなく四角のもの、場合によっては丸のものが必要という情報を入手しました。なので早速東急ハンズへ行って素材を購入。


サイズ違いでヒノキ、アクリルの棒を調達。ひとつひとつは数十円~百数十円、非常に安いため気軽に買えます。


そのままでは長いので持ちやすい大きさにカットします。お店で切ってもらってもよいでしょう。

では、実際に試していきます。といっても一つ一つ説明するのも冗長なので結論を。

この実験で使っている紙粘土を使うにあたっては「5mmのアクリル角棒」がいちばん調子が良かったのでこれを採用します。これより小さいと持ちづらく、大きいと細かい記述がし難いという問題が出てくるため5mmがほどよいサイズのようです。ただ、これは使う人の手の大きさによっても変わってくると思います。また、ヒノキとアクリルだとアクリルのほうがスムーズに刻むことができました。ただ、これは粘土の材質によって変わる可能性があります。今後、違う粘土を使う際にまた実験することになるでしょう。

またこのほかに竹、葦を材質にしたものも追々試していきたいところです。

さて、使うスタイラスが決まったところで粘土版に書いていきましょう。


粘土版は前回と同じものを使います。

そう!粘土版は乾く前に表面を均してしまえばまた使う事ができるのです。この点はハピルスや石板にはない非常に大きなアドバンテージ。反面、固着させるのに時間がかかるのでメリットとデメリットがはっきりしている記録メディアであります。


文字の書く際は、このように角が真下になるようにスタイラスを持ちます。


違う角度から見るとこうなります。

この状態から、いくつかの動作を組み合わせることで色々な形を刻むことができます。

今回の実験で覚えた記述法はこちら。

  • 強く押し込むと、大きな楔になる。押し込む強さで太さを制御できる
  • 押し込んだあと、すぐに持ち上げれば短い楔に。力を抜きながら角を添わせると長い楔に。これで長さを変化させる。
  • ほとんど押し込まずにスタイラスの角を添わせると線が引ける

文字だとわかりにくいのでいつか画像や映像で詳細な説明をするかもしれません。ただ、まだこの記述法が適切かも不明瞭なのでもっと習熟してからのことになるでしょう。

このやり方で前回と同じものを粘土版に刻んでいきます。

そして完成したものがこちら。

前回と比べればかなり「らしい」楔形文字になったんではないでしょうか?ただ、これだと輪郭が見えにくいですね。乾いた後、お盆から出したものに見やすいよう補正をかけるとこうなります。

どうでしょう。古代の雰囲気が出てませんか?ちなみに、刻んだ(つもりの)内容はこのお話です。

ギルガメシュ叙事詩"大洪水"の部分(アッシリア語版) 第11書板 第127行より
六日と六晩にわたって、風と洪水が押し寄せ、台風が国土を荒らした。七日目がやって来ると、洪水の嵐は戦いに負けた。それは軍隊の打合いのような戦いであった。海は静かになり、嵐は静まって、洪水は引いた。
世界の文字の図典 普及版 - 世界の文字研究会 編 p47

ただ読むだけではなく、実際に書いてみるとまた違った感慨があります。言葉では説明しにくいのですが、その「世界」との繋がりがより太くなったという感触でしょうか。

この粘土版を使った実践は楔形文字のほか、石板など彫り系の文字ならほかのものでも活用ができそうです。空想神話を作る場合も使えそうなので有意義なチャレンジになりました。

安い紙粘土と木の棒だけで試せるので、気軽に楔形文字を楽しみましょう!

楔形文字を書く ~ 失敗編

楔形文字 空想神話のデザイン術

神話をより身近にするために、実践はとても大事。ということで楔形文字を実際に書いてみようというチャレンジです。

そして、いきなり申し訳ないのですが今回は失敗編です。スタイラス(尖筆)の選択を間違えてうまくできませんでした・・・。しかし、その失敗のプロセスも明らかにしておきます。これは反面教師として頂きたく。


まず、100円ショップで紙粘土とお盆を購入。お盆は紙粘土が乗るサイズならなんでもよいです。


お盆にラップを巻きます。乾いたあとに取り外しやすいようにという狙いですね。


思い切ってドカっと紙粘土を投下します。


伸ばし棒はなかったので、手のひらを押しつけて伸ばしていきます。


全面に行き渡ったらOK。厚みは1cm前後残しておきたいですね。ここまできたらあとはここにスタイラスで文字を刻んでいきます。
ここまでは問題なかったのですが、スタイラスが悪く刻みがうまくできない。


アッシリア語版ギルガメシュ叙事詩の一節を写本(?)していたのですが、どうやら先端が尖ったものを使うのは間違いのよう。


なんとなく粘土版っぽいものはできましたが、コレジャナイ感がとてもあります。


粘土版のほうは問題なさそうですが、どうやら筆の選択が間違っていた模様。先端は四角や丸のものが必要になりそうなので、新たなスタイラスを手に入れて再チャレンジします。

文字と言語をまなぶ

空想神話のデザイン術

神話により親しむためには、やはり文字と言語をまなぶことが重要。ということで言語系の本を仕入れてまなび初めています。
日本に住んでいると漢字、仮名、アルファベットくらいしか見ることはありませんが文字はその文化圏を象徴するものでもあるので古代の神話を知る際には大事ですよね。もちろん、それぞれ中身を詳細に理解することは難しいのですが「どんな文字か」を視覚的に、イメージで捉えておくとよりその神話の深い部分に触れられる気がします。



世界の文字の図典には、各時代、各地域の文字が豊富に紹介されているのでとても刺激的。粘土に楔形文字を刻んだり、ほかの文字も実際に書いて試してみたくなります。



古代の楔形文字もかなり詳細に説明あり。神話と関係がある文字は基本的に網羅されていますが、口伝しかない神話もあるのでそこはコトバ系をまなぶ必要がありそうです。

空想神話のデザイン術 目次ver0.1

空想神話のデザイン術

まだまだ練りこめてないですが、必要になりそうな項目をリストアップ。順序や粒度はもっと調整しないといけないですが、まずは頭を整理するためにもアウトプットしておきます。

最初の項目は簡単な手順だけでいいかもしれない。シートを埋めていくとできる、みたいな形にできたほうがいいんだろうなぁ。


  1. 空想神話とは?
  2. 世界をデザインする
    • 基本的な物理法則を構築する
      • ベースとなる法則は現実世界
      • 拡張法則を加える
    • 大まかな地形や環境を設定する
      • 地球をそのまま使う
      • 地球型惑星で地形を変える
  3. 民族と種族を作る
    • どんな地域に住んでいるか
    • 生活様式を決める
  4. 言語をデザインする
    • 言語の成立と進化
    • 文字の系統を決める。表意文字、表音文字など。
    • 文法を決める
    • 基本的な単語を作る
    • 民族や種族を象徴する語群を作る
  5. 神話の素となる”事件”のアイデア
    • 台風、大地震、大洪水といった天変地異、Disaster
    • 気候変化による飢饉など、食糧危機
    • 人類以外の生物との戦い
    • 英雄の誕生
    • 民族同士の対立、戦争
    • 王の登場
    • 革命的な技術の登場(火、車)
    • 人間同士の事件、社会的事件
  6. 神性(Deity)のデザイン
    • 擬人法による自然現象や概念の神格化
      • 夜明け、暁、昼、夜といった天象
      • 太陽、月、星などの天体
      • 大地、山、海、川、木といった自然物
      • 風、雨、雪、火、水流といった自然現象
      • 音、詩、音程
      • 数的概念
      • 善、悪、得、罪、無、全といった観念
    • 人物や生物の神格化
  7. 神話の類型
    • 創世神話
    • バナナ型神話
    • 異類婚姻譚
    • 異常誕生譚
    • 貴種流離譚
    • ハイヌウェレ型神話
    • 末子成功譚
  8. 技術的革新のアイデア
    • 文字の発明
    • 火の発明
    • 石器、青銅器、鉄器
    • 車輪の発明
    • 社会、統治システム
    • 農業
    • 学問の発生
    • 学者、詩人、編纂者の登場
  9. 文献を作る
    • 粘土版に記述する
    • 紙に記述する
  10. 神話作りのワークフロー

今年後半戦のテーマを決めました

月が変わり、今年も後半戦に突入しました。
ここまで一ヶ月、いくつかの切り口で記事を書いてきたわけですが、月も変わって新たなテーマに取り掛かるつもりです。

今まで書いてきた内容も、書きながらそこまで悪い感覚ではなかったのですが、何かしっくりこない・・・間違ってはいないけど完全に求めるものでもない。そんな気持ちがあったのです。

 

それはどこから来ているのか、すぐにはわからなかったのですがある日の移動中にふと気づいたのです。

今やっている事は、既にある情報を加工したり紹介するだけでクリエティブさに欠けているじゃあないか?と。それが悪いという話ではないのですが、私の個人的な趣味嗜好としてクリエイティブな要素をもっと入れたかったというのがあります。また、情報や知識も断片的なため向かっている方向がぼんやりしているというのがありました。

 

この事に気付いた後、一つのテーマが頭に浮かんできました。

それは

「自分で空想神話を一からデザインし、そしてそのデザインプロセスを体系化する」

というテーマです。

ただ、空想神話を作るだけではあまり意味はありません。そのプロセスを考え、整理することで今まで以上に神話を楽しみ、理解することができると確信しています。

神話というのは、その要素にさまざまな分野を含んでいます。神様の名前や象徴といった記号だけではないのです。生まれた背景、物理法則、環境、言語、社会、人間の営み・・・多くのものが混ざり合って神話や物語は発生します。

その過程で、現実世界の神話、物語、言語への理解が深まるはずです。これまで書いてきた記事はどれもこの道に役に立つに違いありません。

また、ある程度は簡略化したフレームワーク、メソッドも作って行きたいと思っています。ステップ・バイ・ステップでオリジナル神話や言語が作れるようなものを用意したいのですが、それはこれから走りつつ考えていきます。

 

タイトルは「空想神話のデザイン術」。大まかなやるべきことは浮かんでいますが、かなり長期的な活動になりそうです。まずは大枠の目次作成から取り掛かっていますので、次の更新ではそれをアップします。

6月の記事まとめ

サイト

 6月も最後の日になりました。今月はじめに毎日記事をアップしようと決意してやってきたのですがなんとか達成(うち1つは寄稿ですが)。最初はリズムを作るのが大変でしたが、途中から時間はかかるものの気は楽になり余裕を持って続けることができたのでよかった。

 そんなわけで、今月書いたものをまとめてみます。

原典で楽しむ北欧神話

記事シリーズ開始
別名たくさんオーディン様
12柱のアース神 : 原典で楽しむ北欧神話
オーディンが語る人生の教訓(1)
オーディンが語る人生の教訓(2)

 ひとつは北欧神話に関する話。メジャーな神話なので、登場する神々の説明など今更しても仕方ないと思い原典の詩をベースにした記事を制作。作業の中で古代アイスランド語を調べることが多く、自分のスキルアップにも繋がってしまいました。

ドゴン族

ドゴン族の物語-神話作者の苦労を偲ぶ

 作家の円山まどかさんからの寄稿で、西アフリカのドゴン族に関する話です。神話作者の視点も取り入れたよい記事なのでぜひご覧ください。

スチームパンク

ゼロからはじめるスチームパンク風メンズファッション
簡単なアレンジで作る(?)スチームパンク風ファッション小物
記事シリーズ開始+Wikipedia活用法 : スチームパンク航海誌
取っ掛かりのキーワード : スチームパンク航海誌
スチームパンク風アクセサリ自作はじめの一歩
米スチームパンク作家が語る、スチームパンクファッションのアドバイス

 最近ハマっているスチームパンクに関する記事。神話ではないですが、物語サイドとして様々な視点を取り入れるという名目でやっています。ファッションや工作は文献とは別に神話、物語にとって重要だし積極的に取り入れていきたい。

原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート

アラビアの錬金術事情 : アラビア編(1)
錬金術の思想とプネウマ : アラビア編(2)
Magistery(自然変成力) : アラビア編(3)
元素の分離とTincture : アラビア編(4)
錬金術師Geber : アラビア編(5) 金属の自然原理について : アラビア編(6)
金属と惑星 : アラビア編(7)
硫黄(Sulphur) : アラビア編(8)
砒素(Arsenick) : アラビア編(9)
水銀(Argentvive) = 水星(Mercury) : アラビア編(10)
太陽(Sol) = 金(Gold) : アラビア編(11)
中世ヨーロッパへの伝播 : 中世ヨーロッパ編(1)
ロジャー・ベーコンと「Radix Mundi - 世界の根源」 : 中世ヨーロッパ編(2)
13世紀の金属、鉱物観 前篇 : 中世ヨーロッパ編(3)
13世紀の金属、鉱物観 後篇 : 中世ヨーロッパ編(4)

 4月から受けている、錬金術の講座を受けたレポートの連続掲載。書く前はもっとあっさり済ませる予定だったのですが思いのほか内容がディープでこの量に。アラビアや中世の書を読むのは難しいけど、当時の空気感が伝わってくるので一度は体験してよいと思います。

その他

ディープに、かつカジュアルに神話や伝説を楽しもう ~神話勉強会#1スライド
少しサイトをリニューアルしました

 この他、一日のリニューアル報告と勉強会のスライド。スライドにはこの時考えていたサイトのコンセプトが詳細に書かれています。


 来月からの運用は、これまでと同じくこのサイトに記事をアップするかFacebookでやるかなども含めて検討中。やりたいネタは思いついているのであとはやり方次第というところです。

13世紀の金属、鉱物観 後篇 : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート 中世ヨーロッパ編(4)

錬金術


関連項目: ロジャー・ベーコン

前回に続きロジャー・ベーコンの著作、Radix Mundiから金属と鉱物に関するセクションを取り上げます。

Roger Bacon (1219-1292)
from the Radix Mundi
Chapter 37 : Of the Original of Metals, and Principles of the Mineral Work.

金属が発生する仕組み

我らが硫黄たる太陽と同じ作法で、濃密になった水銀によって水銀に還元される。そして固有の大地と混合し、適度な熱で煮出す。それにより蒸気と雲が生じる。
それは霊妙な水、すなわちSoul, Spirit, Tinctureとなる。
水は大地から出て、また戻る。そして広がり混合し、固定される。賢者はこれを術によって短時間で行う。

前編から繋がる内容です。金属のもとになっているものが世界をめぐり、最終的には何らかの物質になるということが様々な言い方で説明されています。元素、水銀、硫黄の変容によって物質が作られるその流れを、錬金術師は短くすることに意味があるわけです。

自然が行う働きを深く知り、そこからその働きを再現しようという考えは当時の学者や錬金術師の思想を理解するためにとても大事です。単に金を作ろうとしたわけではないのです。

この術の特性

我々が金属を生成するのではない。ある物を別のものにすることはできない。それは自然の力によるものである。
我々はこの術において、自然の従者(servants)にすぎないからである。
それは大地や山の体内で作られる。しかし、術なしでは何の力もなく、元素を動かすこともしない。
自然の鉱物を選ぶよう、アリストテレスは勧めている、そして鉱物の体を生成さしめるためそれに術をかける。
また、金属の始まりを知らなければならない。でなければ、この術を完成させることはできようはずもない。

続けて、術に関わるものにとって重要な心構えが示されます。術者が何かをするのではなくあくまで自然の力によるものなので、自然の従者として術を行うには金属の起源を知る必要あるわけです。

ゲーベルの助言

ゲーベルはこう言っている。もし自然の原理を理解していけなければ、術の完成には程遠い。鉱物の根源を知らなければいけない。
またゲーベルはこうも言っている。自然の事物について真に理解していなければ、我らの術を理解し、学ぶことはできない。物質と自然の原理を探求する叡智を持たねばならない。
そしてゲーベルは言う。汝はすでに知っているとしても、私は秘を示す。それでも万物において自然に倣うことはできはしない。あらゆる特質と差異を自然に習おうとする試みは失敗である。

最後はゲーベルの言葉を引用します。ここでも自然の原理を理解することが大事と繰り返します。しかし、最後にやっぱりだめとかどうしていいのかわかりません。

実際、数百年のあいだ見当違いの事を続けていたわけですからどんどん記述の意味がわからなくなっていきます。意味不明なところを受け入れながら読んでいくしかないようです。


次は来月の講座が終わってから掲載予定。最後はニコラ・フラメルの著作です。

オーディンが語る人生の教訓(2) : 原典で楽しむ北欧神話

北欧神話


関連項目: オーディン

北欧神話の古い詩より、賢さについての教訓話をひとつ。
教訓としてもいい話のですが、この部分の素晴らしい所は原文のリズム感。とても美しい韻文詩になっています。

誰でもほどほどに賢いのがよい。賢すぎてはいけない。いろいろとたくさん知っている人々のうちいちばんよい生活が、この人のものになる。
誰でもほどほどに賢いのがよい。賢すぎてはいけない。あまり賢すぎると、その心が晴れることは稀になるから。 誰でもほどほどに賢いのがよい。賢すぎてはいけない。誰も自分の運命を前もって知りはしない。知らない者は心配がなく、平穏な心でいられる。
燃え木は、燃えつきるまで他の燃え木によって燃え、火は火によって発火する。人も他の人と話をすることで賢くなる。引っ込み思案では賢くなれない。

エッダ-古代北欧歌謡集 | 谷口幸男訳 p.31 オーディンの箴言 より

賢さは行き過ぎるとかえって人を不幸にするという話と、人は人によって賢くなるという話の二本立て。この詩や、他の文化からして当時のアイスランド人は「学問を追求する」という意志は薄かったように感じます。詩や文学は栄えたようですが、いわゆる哲学や学問はマイナな存在だったのかな?

ところで、この訳は昭和48年に書かれたものですが所々よくわからない。特に一段目の「いろいろとたくさん知っている人々のうちいちばんよい生活が、この人のものになる。」ってのが正直読みづらい。僕の読解力が悪いだけなのかもしれないけど、それにしたって変な文では?

さて、そういう時は別の訳や別言語の訳をみるのがよいです。例えば、ある英語訳ではこのような形になっていました。

for those people it is most pleasant to live. when they don't know a great many things.

「多くの事を知らないうちは、楽しく生きることができる」といった感じでしょうか?これだとまだわかるかな。全体を通して「知りすぎるのは不幸」という教訓を繰り返していますね。

この詩、以前の記事で紹介した詩と同じく前半部に同じフレーズを重ねていく手法。

Meðalsnotr skyli manna hverr, æva til snotr sé;

直接的に訳すなら「誰もがMeðalsnotrであるべき、知りすぎてはいけない」。Meðalsnotrはmoderately wise、つまり「ほどほどの賢さ」なのですがそれが一つの単語になっているのは興味深いですね。

そして四つめの節、この原文がとても美しい。

まずは字面をご覧ください。

Brandr af brandi
brenn, unz brunninn er,
funi kveikisk af funa;
maðr af manni
verðr at máli kuðr
en til dælskr af dul.

アイスランド語のHávamálより

色々なフレーズをみても、ここまで綺麗に構築されているのはなかなか無いです。さらに内容もうまくできている。

燃え木は燃え木によって
燃える、燃え尽きるまで
炎は炎によって点火する
人は人によって
話す方法を学ぶ
しかし、自惚れ(もしくは隠蔽?)からは孤独と不機嫌を学ぶ

一行ずつ日本語にするとこういう感じかな?詩的にもいいですね。

このように、原文を見ることでその言語と意味はよくわからなくても音や字面で楽しむことができるのです。神話の詩を読む時はぜひ両方の面で楽しんでください!

米スチームパンク作家が語る、スチームパンクファッションのアドバイス

スチームパンク

TwitterでStrange Artifactの130JETさんがスチームパンク作家G.D.Falksen氏の記事をシェアしてて印象に残ったので内容を日本語で概要をまとめてみました。訳はざっくりだし解釈難しいところがあるので、できれば原文のほうもチェックください。記事は今年1月のものなのでちょっと古いですが十分使える内容のはず。

ちなみにG. D. Falksen氏はこの方。邦訳ないし日本ではほとんど知られてなさそうだけどスチームパンク作家です。
http://en.wikipedia.org/wiki/G._D._Falksen


Steampunk image of author, G. D. Falksen, in an arm mechanism created by Thomas Willeford.
Author : Tyrus Flynn
Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported

こういう格好しちゃう方ですね。

A Sense Of Structure: Steampunk Fashion Rules | gdfalksen.com
原文の記事はこちら。まさにそのままなタイトルですね。

前文

2008年に書いたものだが、より共有しやすくするために再度掲載する。(そうしてくれというリクエストを受け取ったので、というのが理由かな)
私はRuleについて述べたが、それは探求のためのフレームワークであるかもしれない。
既に自信がある人には不要だろうが、スチームパンクファッションにより近づきたいと思っている人は遠慮なく利用してほしい。
内容は私自身の経験、観察、スチームパンク文献の読書と歴史への理解に基づいている。

こんな感じでしょうか?僕は自信がないので大いに参考になりそうです。わかりやすくルールと言っているけど、規約というよりは探求のためのフレークワークだろうと言っている(はず)なのはいいですね。

Rule One

スチームパンク作品に登場する衣類を現実にしたもの。いたってシンプル。

シンプルといってるけど、これってある意味一番曲者なんじゃないだろうか?そもそもスチームパンク作品ってどこまでだよって問題がある。

Rule Two

不確かなら、ヴィクトリア朝のスタイルを参考にする。

これはわかりやすい。別にヴィクトリアンスタイルを学ぶ必要はあるけどやるべきことははっきりしている。

Rule Three

「十分にスチームパンクでない」と恐れて、そのスタイルや魅力から離れなければいけないと思わない。

これ文意が難しい。こういう事を言おうとしてるんじゃないかと思うんだけど・・・。

Rule Four

「スチームパンク色」は存在しない。一部に茶のみ、白のみ、軽い色のみなどと主張する人がいるが間違っている。どんな色でもありえる。
比較的先進的な技術がある世界なので鮮やかな色や複雑なパターンがあることは合理的だ。

それっぽくなりやすい「色」はあるだろうけど、この「色」ではなければいけないという事はないと。好きな色の服を着ればいいとも書いてますね。無理に色をあわせようとしなくていいと思うと気が楽になります。

Rule Five

他のジャンルが好きでもよい、スチームパンクではない服装が好きなのであればそれを誇りにしよう。スチームパンクというラベルを強要されるように感じないように。多様性とユニークさを尊重すること。

他のジャンルのことも受け入れようという姿勢。どんどん自由になってきてる。

Rule Six

楽しみ、あなた自身であること。他の皆にかなうよう強要されると感じないように。
「私はこういう理由でこの服装を十分スチームパンクであると感じる、君達はどう思うか?」というポストをしてはいけない。

「他人がスチームパンクだと思うもの」にあわせるんじゃなくて、自分自身の感情や意志に従いなさいという事かな。このセクションは示唆的で考えるところが多い。自分と他者からの目線のバランスってのは難しいものです。


厳密なところは原文読んでもらうしかないですが、エッセンスは掴めているはず。まとめると「スチームパンク作品、またはヴィクトリア朝のものをベースに」「自分が好きな事を自由にやれ」としか言ってないようにも取れますがようするにそういうことなのでは。

全体から厳密なルールや規約を創るのではなく、自分のうちにあるものを大事にしていけというメッセージを感じるのはいいですね。ただ、そのせいでなんでもありになってしまいそうですが・・・。

日本以外の事情はわかりませんが、こういう記事をわざわざ書いたということは細かい「こうあるべき」論が出てきてトラブルを生んだり論争を起こしたりしたのでしょうか?

何にしても、ファッションですし自分が良いと思ったものを纏えばよろしいでしょう。ということで引き続き好きなようにやることにします。

解釈におかしい部分があれば訂正するので、その際はFacebookなりTwitterで連絡もらえると助かります。

13世紀の金属、鉱物観 前篇 : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート 中世ヨーロッパ編(3)

錬金術


関連項目: 硫黄 水銀 ロジャー・ベーコン

ロジャー・ベーコンの著作、Radix Mundiから金属と鉱物に関するセクションを取り上げます。内容が多いため二回に分けて掲載していきます。

Roger Bacon (1219-1292)
from the Radix Mundi
Chapter 37 : Of the Original of Metals, and Principles of the Mineral Work.

このチャプターの概要

金属の起源と、自然による働きの原理についてが19段落に渡り解説されています。13世紀において考えられていた思想なので、相変わらず現代の科学から考えると意味不明です。
しかし、彼らなりのロジックや体系をもってそれを説明しようとしてことは見て取ることができます。また、この時代は引き続き始原の元素や神という存在に対する信仰が強いのでそのことも読む際に頭に入れておいたほうがよいでしょう。

記述については引き続き曖昧でぼんやりしていますが、アラビア時代に比べると飛躍的に明確な表現が多くなっていて読んでいてもわかりやすい。翻訳もラテン語から英語への訳なので翻訳プロセスは1段階。そのことも読みやすさの一因になっていますね。

アラビア時代からの変化や進化も感じながら読み進めていただけると幸いです。

四大元素の特徴と変化

自然の体は完全であり不完全であり、4つ元素が1つにまとまっている。すなわち火、空気、大地、水が神(God Almighty)によって一体に結びつく
大地と水は物質性、可視性を与える
火と空気は精気と不可視の力を与える
四つの元素が一体になることで他の物体になる
四大元素の変化はalter=部分的変化、change=全体的変化の二種類がありうる

アラビア時代に比べ、少し詳しい設定が追加されていますね。確かに大地や水は目に見えて触れることもできますが、火や空気は形がはっきりしません。空気はもちろん、火は視覚的にはみえるものの触れられるわけではないので、こういった考えに至ったのも理解できなくはないです。
わりと唐突に神によって~と出てくるのがこの時代らしいですね。オッカムの剃刀を適用するなら、その部分は省くべきという判断もできるでしょうが・・・。ちなみにオッカムの剃刀のもとになった概念を唱えたオッカムのウィリアム(オッカムは出身地)は、ロジャー・ベーコンよりやや後ろの時代のフランチェスコ会士です。オッカムの存命は1285-1347年なので、まる一代後ろの世代になりますね。
この時代の記述をみたオッカムが「いや、その説明は冗長では?」と考えたのかもしれません。

同質性と根源性の要求

多様ではだめで、単一の性質ではないといけない。作用と情熱を生み出せない
本性(性質)が一致する事物でなければ真の生成はない by アリストテレス
ニワトコの木や樫の木は洋ナシの実を結ばない
茨から葡萄を得ることもできない
アザミからイチジクの実はつかない
そのものの中に秘あるものからしか、秘を得ることはできない
つまり、石、塩、その他の異質なものから引き出すことはできない
また、ミョウバンが入ってくることもできない
テオプラストス曰く、哲学者は四大元素の場を塩(Salts)やミョウバン(Alums)で誤魔化すことはできない 鉱物の根源より取り出さなければいけない
物質は根源から完成させねばならない

様々な例を出して述べられていますが、性質が同じものでなければその働きができないので、根源的なものを取り出したいのであれば根源的なものと同質なものから取りだしなさいと言っているわけですね。ずっと出てきている硫黄と水銀に繋がっていくわけです。
また、塩やミョウバンへの言及も出てきます。どちらも他の物質への影響が強いものなので古代から重要視されてきたのでしょう。テオプラストスはギリシャ時代の学者(アリストテレスと同じくらい)なので、少なくともその頃には理解されていたわけです。

同じような内容を何度も繰り返し言っているだけに、よほどこの同質性と根源性は重要と考えられていたのでしょう。原典を読むことで、そういった構成からみた文脈も感じ取ることができます。

金属の発生

硫黄と水銀、すわなち鉱物の根源であり自然の原理であるこれらを大地の鉱山や大きな穴で自然が自ら生成する
それは山の孔や脈を流れるViscous water(粘性の水)である 体と実体(本質)がくっついた蒸気、雲が立ち昇る 立ち昇ったそれらは同質の大地へと反射する そして1000年かけて物質は固定される

四大元素と同質性の話に続いて、金属の発生原理についてが書かれます。ここはアラビア時代から大きく変わらず、硫黄と水銀が自然の大地で育まれ鉱物となりますよという話ですね。
もちろん、その際に一度蒸気となりその後固定されるというプロセスが想定されていました。具体的に1000年といった数字が出てくるなど、少し踏み込んだ内容にはなっています。


アラビア時代の知恵を継承しつつ、より詳細にしていこうという意志がみえてきました。ただ、数百年の時が経ってもあまり進展はしていないようにも見えます。現代のように情報伝達が高速ではないため致し方ない部分があるのでしょう。 後編に続きます。

 
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