up

多くの神話は「声の文化」に生まれ、「文字の文化」によって死んだ

空想神話のデザイン術

私達は文字の文化に生きています。この文章も文字ですし、街の中、生活のいたるところに文字による情報があふれています。

特に、日本は識字率が非常に高い国なので文字を扱えない人というのは極めて稀です。社会も文字が扱えることを前提に構築されています。

テレビやラジオといった媒体の「トーク」ですら、多くの部分は台本があるわけでそれも一度文章化された情報です。

さらにいえば、たとえ声で喋っている人もそこに至る過程で文字を利用しています。なので、まったく文字の影響を受けていない現代人というのは実質、ほとんど存在しないといっていいでしょう。

しかし、神話が生まれた時代はそうではありません。確かに、多くの神話は文字や文章によって記録されることで保存されてきました。ただし、その神話そのものは文字がない文化から継承されていることが多いのです。

人間にとって文字は必須コミュニケーションツールではない

文字が無い文化はありますが、声によるコトバがない文化というのは存在しません。それはもはや人間社会の文化とはいえないでしょう。世界にはまだ文字を持っていない民族が残っていますし、識字率が低い国もあります。赤ん坊だって最初に覚えるのは文字ではなくコトバです。

また、古代においては文字が扱えるというのは特殊な技能であり一部の人が持つ文化でした。学者や専門職に該する人の術だったわけです。

そのことが、神話を知るうえで重要です。

多くの神話は「声の文化」に生まれ、「文字の文化」によって死んだ

数多くの神話、ギリシャ神話や北欧神話などは声の文化によって生まれました。詩人によって昔話や教訓話が語り継がれた時代です。

その世界には文字が無いため、基本的に伝達はすべて口伝で行われます。結果、神話は僅かながらも変化をすることになるでしょう。伝達の際、ミスがあって完全にコピーされないこともあるでしょうし受け取った詩人によるアレンジが入ることもあります。

もちろん、大筋は変わらないし文化としての傾向がかわるものではないですが常に変化をし続けています。

この時代の神話はまさに「生きている」神話です。生きているからこそダイナミックに、変化を続けていたわけです。

時代が進むと様々な理由で声の文化はなくなり、各地の神話も失われていきました。ただその中でも幸運なものが、文字によって記録されていました。

しかし、その神話はもはや死んでいます。神話を生み出した文化や社会は既に存在せずそれが発展、変化することはありません。

つまり、我々が今知る神話というのは多くが「神話の化石」であるといえるでしょう。

神話が生きていた時代にトリップする

神話はすでにほぼ死に絶え、私達が得ることができるのは神話の化石ばかりです。でもそれに意味がないわけではありません!化石を通じて、当時の時代を思い浮かべることはできます。

もちろんそのためには様々な周辺知識が必要ですが、それをするだけの価値と面白さがあると信じています。

「神話の化石」そのものだってもちろん楽しめるものですが、それをツールとして生きた神話を体感することはより日々の生活を豊かにしてくれるでしょう。


このエントリーをはてなブックマークに追加

ご覧頂きありがとうございます!よろしければこの記事の紹介、拡散にご協力ください!

タグ[空想神話のデザイン術]の記事

オーブン陶芸粘土を使って楔形文字粘土版をつくる ~ 焼きあがり編 2013/10/23 14:51 枇々木聖
気候区分を学ぶ(1) : 気候が神話に与える影響を加味したい 2013/10/18 19:10 枇々木聖
領域と経路に抽象化した空想の世界地図モデル 2013/10/11 20:52 枇々木聖
空想神話作りのための世界シミュレータ設計 2013/10/07 17:52 枇々木聖
オーブン陶芸粘土を使って楔形文字粘土版をつくる ~ 下ごしらえ編 2013/07/19 19:56 枇々木聖
多くの神話は「声の文化」に生まれ、「文字の文化」によって死んだ 2013/07/12 17:11 枇々木聖
空想言語メモ 最初の一歩 2013/07/09 17:05 枇々木聖
実践 オリジナル楔形文字のつくりかた ビギナー編 2013/07/08 19:26 枇々木聖
空想言語のデザインに向けて 2013/07/06 22:26 枇々木聖
楔形文字を書く ~ リベンジ編 2013/07/05 18:21 枇々木聖