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ニコラ・フラメルの著書にける硫黄と水銀の扱い : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート 中世ヨーロッパ編(6)

錬金術


関連項目: ニコラ・フラメル

ニコラ・フラメルが書いたとされる「賢者の術概要」の内容をざっくりと紹介していきます。実際に著された時期は諸説ありますが、ある時代の錬金術思想を大きく反映した内容になっているのは間違いありません。

根底に流れている思想はアラビア時代から大きく変わってはおらず、似た内容が多々出てきますがその微妙な差も含めて感覚を掴む手掛かりになるでしょう。

物質の源一性

錬金術の書において、形を変えて度々出てくる思想が物質は根源的にはひとつだということです。色々な物質があるのではなく本質的にはひとつのものが多様な姿ととっているに過ぎないという考えで、それがあるからこそ卑金属を貴金属に変えたり魂の浄化によって物質を変容させることも可能だという理屈です。

この考え、紀元前の昔からこの時代まで続いていたわけで非常に根強い信仰があったことが伺えます。

金属の精子とその特性

賢者の術概要では、まず硫黄と水銀の性質と働きが説明されます。度々出てくる硫黄と水銀ですが、賢者の術概要でも細やかな記述がなされています。

  • 硫黄と水銀は金属の精子である
  • 一方(硫黄)は男性精子、他方(水銀)は女性精子である
  • 硫黄は土と火の元素の謂で、火を内包する土である
  • 水銀は水と空気にほかならないもので、空気は水の中にある
  • この二つは二頭の竜またはグリフォンより獰猛な二匹の蛇にも喩えられる
  • 無翼の竜は硫黄。
  • 翼持つ竜は水銀。
  • この二つが自然の手により合体すると、一切の金属の母と呼ばれるものになる

全ての金属は硫黄と水銀、またそれに内包される四大元素のバランスだということが繰り返し述べられています。また、その元素も結局はもともとひとつのものが多様な姿をとっているだけなので大元はひとつしかありません。

土、水、空気、火が指しているもの

四つの元素が文脈に出てくるとき、それが現代日本語が指している土、水、空気、火の意味と同じだと思ってはいけません。訳の都合ももちろんありますが、金属と惑星の対比にもあるように錬金術師はあるものを表現するためにそのものの名前をあえて用いない傾向があります。

なので、この四大元素も言葉が指しているものそのものというより、「それが持つ性質」を指していると考えたほうがよさそうです。

土は固定されていて重いもの、固体の性質。
水は広い意味で流れるもの、流体の性質。
空気は希薄なものや捉えられないもの、気体の性質。
火は触れられない、形の無い熱やエネルギー。

そう考えていくと、確かに万物の元素らしいところがあります。


賢者の術概要にはまだ多くの内容が含まれているので続きます。


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