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オーディンが語る人生の教訓(2) : 原典で楽しむ北欧神話

北欧神話


関連項目: オーディン

北欧神話の古い詩より、賢さについての教訓話をひとつ。
教訓としてもいい話のですが、この部分の素晴らしい所は原文のリズム感。とても美しい韻文詩になっています。

誰でもほどほどに賢いのがよい。賢すぎてはいけない。いろいろとたくさん知っている人々のうちいちばんよい生活が、この人のものになる。
誰でもほどほどに賢いのがよい。賢すぎてはいけない。あまり賢すぎると、その心が晴れることは稀になるから。 誰でもほどほどに賢いのがよい。賢すぎてはいけない。誰も自分の運命を前もって知りはしない。知らない者は心配がなく、平穏な心でいられる。
燃え木は、燃えつきるまで他の燃え木によって燃え、火は火によって発火する。人も他の人と話をすることで賢くなる。引っ込み思案では賢くなれない。

エッダ-古代北欧歌謡集 | 谷口幸男訳 p.31 オーディンの箴言 より

賢さは行き過ぎるとかえって人を不幸にするという話と、人は人によって賢くなるという話の二本立て。この詩や、他の文化からして当時のアイスランド人は「学問を追求する」という意志は薄かったように感じます。詩や文学は栄えたようですが、いわゆる哲学や学問はマイナな存在だったのかな?

ところで、この訳は昭和48年に書かれたものですが所々よくわからない。特に一段目の「いろいろとたくさん知っている人々のうちいちばんよい生活が、この人のものになる。」ってのが正直読みづらい。僕の読解力が悪いだけなのかもしれないけど、それにしたって変な文では?

さて、そういう時は別の訳や別言語の訳をみるのがよいです。例えば、ある英語訳ではこのような形になっていました。

for those people it is most pleasant to live. when they don't know a great many things.

「多くの事を知らないうちは、楽しく生きることができる」といった感じでしょうか?これだとまだわかるかな。全体を通して「知りすぎるのは不幸」という教訓を繰り返していますね。

この詩、以前の記事で紹介した詩と同じく前半部に同じフレーズを重ねていく手法。

Meðalsnotr skyli manna hverr, æva til snotr sé;

直接的に訳すなら「誰もがMeðalsnotrであるべき、知りすぎてはいけない」。Meðalsnotrはmoderately wise、つまり「ほどほどの賢さ」なのですがそれが一つの単語になっているのは興味深いですね。

そして四つめの節、この原文がとても美しい。

まずは字面をご覧ください。

Brandr af brandi
brenn, unz brunninn er,
funi kveikisk af funa;
maðr af manni
verðr at máli kuðr
en til dælskr af dul.

アイスランド語のHávamálより

色々なフレーズをみても、ここまで綺麗に構築されているのはなかなか無いです。さらに内容もうまくできている。

燃え木は燃え木によって
燃える、燃え尽きるまで
炎は炎によって点火する
人は人によって
話す方法を学ぶ
しかし、自惚れ(もしくは隠蔽?)からは孤独と不機嫌を学ぶ

一行ずつ日本語にするとこういう感じかな?詩的にもいいですね。

このように、原文を見ることでその言語と意味はよくわからなくても音や字面で楽しむことができるのです。神話の詩を読む時はぜひ両方の面で楽しんでください!


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