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ロジャー・ベーコンと「Radix Mundi - 世界の根源」 : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート 中世ヨーロッパ編(2)

錬金術


関連項目: ロジャー・ベーコン

中世ヨーロッパ編、まず扱うのは13世紀の学者ロジャー・ベーコン。彼はフランチェスコ会の修道士であり、当時のあらゆる学問に通じていました。その範囲は幅広く、学術言語、数学、自然哲学、アリストテレス哲学、錬金術、占星術、はては光学まで。

また、彼は先見の明がとてもあり未来に登場するであろう様々な技術を予見していました。それは自走可能な船舶や戦車、飛行機械、潜水艦や光学機械まで広がっており、もちろん当時の技術では実現不可能なものばかりですがその見通しは特筆たるものでしょう。

ただ、彼が実際に各学問の進歩に対してどれだけの貢献をしたかは定かではありません。研究のオリジナリティについても同様で、その博学さで当時の学問の集大成ともいえる書を残していますが学問上のイノベーションにどれだけ寄与したかははっきりしていないようです。

自然と術の関係

ロジャー・ベーコンたち当時の学者の思考にひとつ頭に入れておく点があります、それは自然と術の関係です。この術、というのは錬金術も含めた彼らが成そうとしていた世界に働きかけるための術です。文中ではArs(アルス)もしくはArt(アート)などと記述されることが多いですね。アラビア編でも、よく文中で"this Art"といった言葉が出てきました。

さて、術と自然の関係についてはこのように考えられていたようです。

  • 道具として自然を用いる術は、自然の力より強力
  • 自然と術は相互補完的で、潜在的に協力的

後者は、講師いわくアリストテレスが論じた可能態(デュナミス)的なもとの同一であろうとのことです。アリストテレスは現実の事物が存在するのは、その元となる可能態が発展した結果だと考えていました。この時代の学問はアリストテレスの思想を継承しているので、自然とそういった概念が含まれています。

Radix Mundi - 世界の根源

講義では、ロジャー・ベーコンの著作の一つ「the Radix Mundi」が取り上げられました。ここで扱われるのは当時の世界すなわち自然界に対する考え方です。

  • アリストテレスの金属の起源に関する理論
  • ゲーベルの硫黄 - 水銀理論
  • 四大元素の理論

このような思想がアラビアを経由して13世紀ヨーロッパに浸透していくことになりますが、彼の著作はまさにその先駆となるものだったのでしょう。


次回はRadix Mundiから金属の起源と鉱物の働きの原理についての章を取り上げます。この章は、当時の学者が金属や鉱物が世界においてどのような存在であると考えていたかが伺える内容になっています。


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