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中世ヨーロッパへの伝播 : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート 中世ヨーロッパ編(1)

錬金術


関連項目: ヨハネス22世 ロジャー・ベーコン

講義の4回目、中世ヨーロッパ編に入っていきます。アラビアで発展を遂げた錬金術は12世紀になってヨーロッパへと伝わることになります。

イベリア半島(スペイン)を経由した伝播

ヨーロッパルネサンスが本格化するのは14世紀、15世紀に入ってからですが、そこから数百年前のイベリア半島ではすでにその兆しが現れていました。
※イベリア半島=現在スペインとポルトガルがあるヨーロッパ南西の半島
イベリア半島は8世紀にウマイヤ朝が西ゴート王国を滅ぼした後、数百年の間アラビア世界としての歴史を刻みます。しかし、11世紀の後ウマイヤ朝の滅亡やカスティーリャをはじめとするキリスト教勢力によるレコンキスタの活発化などもあり、ヨーロッパ文化とアラビア文化が交錯する場所となっていきました。

数度に渡る十字軍の遠征、長期に渡るイベリア半島でのレコンキスタが奇しくもアラビア文化がヨーロッパに伝播にするきっかけとなったのです。

トレドに伝播した錬金術

錬金術が特に盛り上がったのはイベリア半島の都市トレド。この都市はカスティーリャ王国の首都だったこともあり、学問が盛んでした。1085年からヨーロッパ文化圏になったトレド、1236年に陥落したコルドバは中世ヨーロッパの錬金術にとって重要な都市であります。

1140年代には、トレドで活動していた翻訳家チェスターのロバートがはじめてアラビア語文献の翻訳しています。その後少しずつ訳本が増えていきます。そしてその過程でアリストテレスの全集などもラテン語に訳されることになります。

聖職者たちの錬金術

12世紀を皮切りにヨーロッパに伝播した錬金術は、当初聖職者たちの間で発展しました。13世紀のキリスト教修道会、ドミニコ会とフランチェスコ会の修道士や聖職者がアラビアから伝わった錬金術の研究をはじめたのです。
ドミニコ会のアルベルトゥス・マグヌスとトマス・アクィナス師弟、フランチェスコ会のロジャー・ベーコンは当時を代表する学者であり、錬金術にも精通していました。
因みに、キリスト教の聖人および偉人伝記である黄金伝説を記したヤコブス・デ・ウォラギネなどもこの時代のドミニコ会士です。

この時代の錬金術は、自然学的関心に基づいて行われていたようです。神による天地創造を再現しようとする試みでもあり、神の知へより近づこうとする活動でもあるそれが自然哲学となっていきます。もともと古代ギリシャでは聖職者や学者のものだった錬金術がアラビアでは比較的自由な場で公開され、ヨーロッパでは再び聖職者のもとに戻ることになります。

13世紀は錬金術を含めたアラビア学問やそのもととなったギリシャ学問の文献が次々とラテン語に翻訳され大きな熱狂が生まれた時代でした。しかし、ロジャー・ベーコンがアラビア思想を広めた疑いで一時投獄されることになるなど錬金術やアラビア文化の研究は公に承認を得たり奨励されていたものではなかったようです。

先進的な学者の間で密かな人気!とかそういった性格のものだったのかもしれません。

大衆化する錬金術

14世紀に入ってキリスト教会の態度が大きく変わります。ヨハネス22世の勅書により聖職者へ錬金術の禁止令が出ることになりました。教会内で異端のきっかけとして問題とされたことや、詐欺的な錬金術師が増えてきたことも原因となっていそうです。

またこの時代になると聖職者ではない学者や知識層が現れ錬金術の世俗化、大衆化が進んでいきます。同時に詐欺的な錬金術師が増えたり、世俗の欲望だけで錬金術を利用しようとするものが増えるなど問題を発生させながらも発展を続けていくことになります。

Roger BaconとNicolas Flamel

上記のような事情がある中世ヨーロッパの錬金術。講義では中世の代表的な錬金術師Roger BaconとNicolas Flamelの著作を読むことになります。
次回はBaconの著作の1つ、「Radix Mundi(Root of the World=世界の根元)」の内容に入っていきます。


これで今(2013年6月16日現在)受けている部分はすべて書けました。以降は次回講座の終了以降に掲載予定です。


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