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錬金術師Geber : 原典で辿る錬金術の歴史 講義レポート アラビア編(5)

錬金術


関連項目: 錬金術師ゲーベル

Khalidに続いてJabir ibn Hayyanの著作に入っていきます。

【関連記事】
1:アラビアの錬金術事情
2:錬金術の思想とプネウマ
3:Magistery(自然変成力)
4:元素の分離とTincture

Jabir ibn Hayyanもしくは偽Geberについて

ジャービルもハリードと同じくアラビア時代の錬金術師ですが、後世の西ヨーロッパにではGeberと呼ばれ非常な権威を持つことになりました。しかしその権威の影響でジャービル本人が書いてないものもGeberによる書とされてしまい、偽書が非常に多く残されることになります。 (Geberの日本語読みはゲーベルが近い)
アラビア語の原典があるものは本人が書いた可能性が高いですが、ラテン語版のみ残されている書の多くは偽書とされています。それだけ当時の錬金術師界においてJabirの名が権威的であったことは確かと言えるでしょう。

前述のKhalidはアラビアに錬金術文化を興す立役者であり、古代とアラビアを繋いだ錬金術師とするとGeberはアラビア期と中世ヨーロッパ期を繋ぐ錬金術師と言えます。

そのGeberが残したとされる重要なものが3つあります。

  • 硫黄-水銀理論
  • 賢者の石を準備するための主要なプロセス
  • 炉(かまど)、火加減、その他の実験装置

この3つ、特に硫黄、水銀やその他金属をどう扱うかについて後世の術師に大きな影響を与えることになりました。


Jabir ibn Hayyan (8c) / Pseudo-Geber(13c)
from Of the Investigation or Search of Perfection(final chapter)
Chapter 11 : Of the Properties of the Greater Elixir.

この書に書かれていること

Elixirの特質と、錬金術の作業に求められるものについてが記述されています。
しかし、やはり全体的に非常にもやっとした表現です。キーワードとしては「流入する」「固定できるものを固定」「圧密した」「金と銀をもやさない」などが出てきますがよくわかりません。
また、その準備は一度の準備では無理で、長い時間が必要であるとも言っています。ただ、長いとはいえ人間の業として可能な程度には短いと言っているようです。自然界に置いては非常に長い時間をかけて行われるプロセスを、この術によって短縮することこそが価値であるとの事です。

Opus(術=錬金術)に必要なもの

  • 忍耐
  • 多くの時間
  • 器具、装置の適切さ

この3つが術(=Work=Opus)に必要とこの章に書かれていますが、具体的な記述はありません。。。
心構えをひたすら説かれます。というか、何だってそうだろと言いたくなる内容で非常に困る。

Elixir(our Stone)の構成

この章において、

  • 実り豊かなプネウマ
  • 生ける水(Living Water、またはdry waterと呼ばれる)

我々の石(=賢者の石=Elixir)とはこの2つ以外の何者でもない。
そして

  • 希薄な完全なる体

を加えた3つにより、術を短縮することができる。
と書かれています。正直「おまえは何を言っているんだ?」というところですが馬鹿にしてはいけません。当時は真面目にこのような仮定のもとで様々な実験や研究を行っていたのです。Jabirの生きていた8世紀アラビア、偽Geberの書が書かれた13世紀ヨーロッパの状況を踏まえて解釈をする必要があります。


次回も引き続きGeberの著作になります。ちなみに、ここまで実際の講義では2回と少し。非常に濃度が高いです。


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